昼前にダイニングの窓からお天気雨ならぬお天気雪を眺めて、近頃の天気が記録的な寒波であることを日本の報道でもコロンビアの報道でも伝えていることをマリアと話しながら遅めの土曜日の始まり。
僕の英語が上達していることを僕より英語が喋れるマリアから褒められて、いい気になりながらBBCニュースにチャンネルを合わせました。
それによれば明日くらいに10センチだか15センチの積雪が予想されていて、この前の40センチに比べて大分リアリティーがあるな、なんて思っていたらマリアいわく月曜にはマイナス10℃くらいになるとのこと。
ただしこちらの気持ちとしては、それを見越して今のうちに「運動溜め」しておこうかなと外に走りに行くわけでもなく、ダイニングのソファーでゴロゴロとインターネットを決め込みました。
そこへブサイクコンビの兄貴分、眉毛が繋がっていない方のファンパオロがやってきて
「キッチー、今日は予定があるのか」
と聞いてきたので「無いよ」と答えると、俺達と一緒にお城を観に行かないかとのこと。
城にも観光にもビタ一文興味が無かったけど、ブサイクコンビへの興味は山ほどあるので、のんびり気分を捨て去って寒空の下、一緒に出かけることにしました。
見てくれのインパクトと違ってシャイなフリアン(フリアーノじゃなかった)とは対照的に、顔のみならず胸の張り具合までもが気持ち悪いファンパオロは、内面に関しても『愛すべきバカ』の資質を持っているナイスな野郎です。
バカの特徴でパッと思いつくものに、
「思いついたことを考える前に言っちゃう、やっちゃう。
覚えたての言葉やお気に入りの語感のフレーズを無意味に乱用する。
躁病のようにテンションが高い。
空気を読めないし、読む努力すらしない。
巻き込まれた周りの人間が誰一人として幸せにならない。」
というものがあります。
それを覚悟しての『野郎三人旅』が始まりました。
フラットを出てすぐの初っぱなは、氷になっている地面を見つけては、キャッキャキャッキャと嬉しそうにスケートの真似ごとです。
案の定転びかけた「鳩胸ダイナマイト」のファンパオロに、雪を見るのはロンドンが初めてかと聞くと、やはりそうみたい。
「雪は楽しいよ。70パーセントくらい。残りの20から30パーは危ない」
とまあまあ下手な英語で言われたけど、100に足りなくなることを一切気にも留めず「20から」と言ってしまう辺りにポテンシャルを感じます。
バスの中では二階席の一番前に座ったのですが、曇った窓ガラスが嫌だったみたいで「ちゃんと見えるようにしなきゃ」と何目線なのかフロント側のガラスを手袋で拭き、サイド側上部にある窓を全開にして、風が直で当たる真後ろの座席の人を凍えさせてました。30秒で閉めてやったけど。
途中、「このバスで目的地まで行くから大丈夫だよ」という僕の助言をファンパオロが押し切って、「違うよ、ここで乗り換えだよ!」と無理矢理僕らも巻き添えにして降車した直後、バスの行き先表示を見て5秒後に同じバスに乗車。
着いたら着いたで「切符買ってから入場口に行くんじゃないの?」という僕の質問を無視して、手ぶらでモギリの姉ちゃんの所へ。姉ちゃんの券売所の場所の説明が理解できないのか、その場で金を払おうとするので、最終的には「坂の上だよ!」って姉ちゃんを半ギレさせてました。
ただでさえ、激烈な寒さのせいで入場前からここへ来たことを後悔しているのに、ファンパオロの馬鹿さ加減はこうして拍車をかけてくれます。
場内は撮影が出来るところと出来ないところがあって、「ここに来るのは二度目」のファンパオロは撮影禁止の王冠を、係員の前で堂々と撮影をして怒られてました。
メインである中央の塔に入った時は色々な鎧やら武器やらが展示されていて結構面白かったんだけど、最終的にはそこで彼らとはぐれました。
見て、聞いて、触って、の『体験コーナー』みたいな家族向けのフロアに行った時、家族連れ以外はたいていスルーするのにも関わらず、ファンパオロだけがチビッ子に混じってがむしゃらにモグラ叩きまがいのゲームをして盛り上がっていたので、フリアンと一緒に塔内の終着場である土産物コーナーで売り物を眺めながら待っていました。
そして気づくといつの間にか二人で先に出ていってしまったのか、フリアンも見当たりません。
携帯の番号を聞いていなかったことを思い出し、仕方なしに花火大会の時同様、自分のペースで場内を楽しみ、彼らが見つかっても見つからなくても飽きたら一人で帰ろうと決めて、他の塔のつまらない展示物をノルマのようなペースでやり過ごしました。
そして、雪も強くなってきたしお腹も減ったし、と出口に向かおうとしたところでフリアンにばったり。
「何してたんだよ。ずっと探してたんだよ」
と嬉しそうな笑顔で言うもんだから、本当のことは言えず
「俺もずっと探してたんだよ」
と満面の作り笑いで返してあげました。
その後、二手に分かれていたファンパオロとも合流して場外へ。
黄昏時の雪景色のタワーブリッジがきれいなブルーの色合いを出していてロマンチックでした。が、僕の隣には二人のブ男です。
さ、帰ろ。
帰り道にあった土産物屋に入ったときは、ファンパオロがハナから買う気もないのにパーティー用の帽子を片っ端からかぶって、その全てを記念撮影してました。撮ってあげるフリアンもフリアン。
ちなみに行く前に「どこに行くの?」とか「場所の名前は何?」とかの僕の質問に
「エンリ8世の城」
とヘンリーを思いっきりスペイン語読みで教えてくれてたけど、土産グッズに書かれているロゴから、今見てきたところがあの有名な『ロンドン塔』であることが判明。僕がロンドンで唯一名前を知っていた観光名所。
それをわかってて観ておきたかったなあ、などと思いながら少し遠めのバス停まで歩いているときに、ファンパオロが
「寒いから体あっためるためにバス停までジョグしない?」
と言って走り出しました。
こういった本能に忠実なバカの行動には尊敬や憧れがあったので、僕もフリアンとともに彼に続いて走り出しました。
きっとこいつは寒さに関係なくても「ただ走りたかったから」という理由だけで走り出すことも出来る男前なんだろうな、と思いながら僕もフリアンもぐんぐんファンパオロを追い抜いていくと、30秒もしないうちに
「もうあったまったから歩こうぜ」
と言いだしっぺからの提案が。これもバカのいいところ。
ただし僕もフリアンもペースを緩めなかったので、彼は残りの数百メートルを苦悶の表情を浮かべながら走ることになりました。
いいねえ。いい顔してる。中2くらいまでの女子だったら見ただけで吐く。
帰りのバスでは、誰のせいで僕と二人がはぐれたかを言い合ってましたが、バスを降りた後に寄った八百屋を出た時に、そのままフラットとは反対方向に歩きだした僕の方向音痴さ加減を見て、
「やっぱり原因はお前だな」
とファンパオロに言われました。
しまったー!流れから言ってここは絶対に逆じゃないとダメだろ!よりによってアイツに言われるとは!最後の最後でしくじった!一生もんの屈辱!
と悔んだところで、時すでに遅し。
長い長い一日の終わりに新しく試してみたビールがまずくて残念だけど、ひたすら疲れる一日をプレゼントしてくれた彼らに感謝です。
上の写真は入場前にロンドン塔の前で撮ったもの。彼の鳩胸も白髪も、滲み出ているはずの馬鹿も全然表れていない。この場合「写真うつりが悪い」と言った方が正しいんだろう。
前に杉並で竹原ピストルのライブを観たときに、CDで聴くのとは全然違う、そして僕の語彙能力では到底表現できない彼の仕事ぶりの素晴らしさに「世の中、計測できないものや記録できないものなんて自然の壮大さ以外にもやっぱりあるんだなあ」と改めて思いました。
その時とベクトルは真逆だけど、彼の写真を見て持った感想も同じです。
こっちの方がいくらか伝わるかな。
あ、「フリアンもフリアン」とか言っときながら俺も撮ってる。
0 件のコメント:
コメントを投稿