
倉庫になっていた隣の部屋が先週末から復活して、かわいくないエスパニョーラ(スペイン女)三人が引っ越してきました。
僕と同い年なのにオッパイが超垂れていることが服の上からでもわかる姉貴分のサンドラと、名前は忘れたけどネプチューンの名倉に似ている
双子の姉妹というラインナップです。しかも片方はカリアゲ。
そのサンドラが「明日4時に起きなくちゃいけないんだからちょっと静かにしてくれない!?」と深夜1時にも関わらずダイニングで大声を出しているマリアに注意をしてきました。
お、やった。今度はまともな人が入ってきた。
とは言え僕にしては珍しく、その時は注意された側の輪に入ってました。
今しがた終わったばかりの「こと」の説明をみんなにしてあげていて、輪の中心になっていたのです。
話を少し巻き戻します。
学校でもフラットでもその言動で周りの人間の気分を落ち込ませることに抜群に優れている中国人のルームメイトに見切りをつけて、昨日の朝、マリアにクレームを申し出ました。(彼女はうちのフラットを扱っている不動産屋で働いているので。)
フラットのみんながよく言っている彼の奇妙な行動やら共同スペースでのマナー違反はとりあえず置いておいて、特に僕が告げたのは部屋から異臭がすることに関しての改善が全く見られないということです。
説教した時の彼の返事は素直で素晴らしいんだけどな。
特に一昨日の夜がひどく、その夜は窓を開けたまま寝たために外気の寒さから何度も目を覚ました末のクレームでした。
その時のマリアの反応はとても嬉しそうで
「そういうことはもっと早く言ってよ!今まで何度も『アイツに迷惑かけられていない?』って聞いてもキッチー、いつも『大丈夫』しか言わないんだもん。アタシとパオラ(パオラもこの不動産屋で働いている)で何度も社長に『早くアイツを追い出して』って言ってもイマイチ反応が悪いからさあ。キッチー、直接うちのオフィスに来て詳しく説明してあげてくれない?そしたら100パー彼を追い出せるから」
というものでした。
そしてその後20分ほど、彼に対するマリアの愚痴を僕が聞いてあげる羽目になりました。
ああ、みんな、こんなにも困っていたんだね。
ただマリア、クレームをつけたのは俺の方だったんだけどね。
どっちにしろ家賃を払うタイミングだったので、オフィスを訪れた際にスタッフに件(くだり)を説明すると、
「遅くても4週間以内に彼を追い出す。ただし、ここの家賃を納めているのが彼の叔母なので、まず彼女に通告しなくてはいけない」
というものでした。
ところが叔母の電話番号をスタッフが誰も知らないので、先ずはマリアに『レター』を持たせてフラットで中国人に叔母の電話番号を書いてもらい、翌日その番号にスタッフが電話をする、ということでとりあえず一区切りです。
ここまでが昨日の話。
そして今日、夕飯時にみんなでダイニングに集った時、マリアが僕に聞いてきました。
「キッチー、今日中国人見た?」
見たのでそのまま「見た」と答えました。
「ちなみにアイツ、昨日は上の部屋で寝てた?」
こう聞いたのは、実は彼は僕と一緒の時間帯に寝ることが少なく、夜遅くにフラットを出て朝方帰ってくることが多いからです。
あれ、昨日一度夜遅くに帰ってきて、小一時間でまた出ていったことを知らないのかな。「レター」はどうなったのかな。電話は?
「昨夜はまた出かけていたけど、今朝6時過ぎに一度帰ってきて10時頃にまた出てったよ。ほら、洗濯機の中に彼の洗濯物入れっぱだろ」
「いや、実はね、今日事務所に電話がかかってきて、アイツの住所を教えてくれって言われたのよ。でよくよく聞くと警察からの電話でね、アイツが逮捕されたか何だかよくはっきりわからないんだけどね、何か問題が起こったらしいのよ」
あら、マジで?そう言われてみれば学校でも見かけなかった気がするけど・・・うーん、クラスが違うからあんま覚えてないなあ。
「ねえ、アイツ、葉っぱとかクスリとかやってない?」
「いや、さすがにそういうのはやってないだろ」
「それ、確か?」
「うん、確か・・・と思う」
「どっち?確か?」
そんなこと言われてもなあ。
あ、でも部屋の異臭も実は隠していた非合法のモノの匂いだったとか。
そういうのあんまし詳しくないから何の匂いかわからなかっただけで。
警察に捕まったって言うから、てっきりまたバスのタダ乗りがばれて捕まったとかそんなケチな話なんじゃないの?と思ったけどマリアにしつこく問われるとわからなくなってくるなあ。
とりあえず「アイドンノウ」と答えてその場は終えました。
部屋に戻ってから色々考えて、たぶん彼の叔母の電話番号をマリアが聞き出せていて、件のクレームが叔母経由で彼に伝わっていて、普段から叔母を極端に恐れている彼がやけを起こして酒を飲んだ挙句、傷害か器物破損でもしたんじゃないかなという結論に達し、後味の悪さを感じながら眠りに就きました。
そして、先ほど夜中に僕の部屋をノックする音が。
半分寝ぼけながら受け答えをすると、どうやらマリアの声で
「開けてもいい?」
おいおい、夜這いかよ?かわいいヤツめ。とまだ充分に寝ぼけながら「入りな」と促すと、マリアの後ろに控えていたのであろう二人の男と一人の女が僕の部屋に入ってきました。
警官でした。
マジかよ。
面喰らいながらも、ルームメイトが何をしたのかと尋ねると、決まり事でそれは話せないとのこと。
同じく決まりごとのようないくつかの受け答えがリーダー格の警官と僕とで行われると、いわゆる家宅捜索というヤツが始まりました。
こんなチャンスはめったにないと思い、ペットボトルの水を口に含みながら急いで眠気を覚まして興奮しながらも、あんまり彼らをジロジロ見ていると怪しまれるかなと思ったので、あまりガっつかずにベッドの上で横になりながら彼等の仕事を眺めてました。
狙いとしては平日昼間にソファーに寝っ転がって肘をつきながらテレビの通販を眺めている主婦(38歳くらい)。
なんて余裕のフリをしていたら「きみの持ち物も調べさせてもらってもいいか」ときました。
そりゃそうだわな。そうくるわな。
あの中国人がモノを僕の引き出しとか、勝手に開けたトランクとかに隠していたらどうしよう、大丈夫、指紋が証明してくれる、なんて内心ちょっとビビりながらも彼らの指示に従っていましたが、どうやら捜索の傾向を見ていると探しているものはクスリや葉っぱではなく「情報」に関するもののよう。
彼のノートパソコンにUSBメモリ、DVD、CDRなどのOS機器、って言うんだっけ?いわゆるメカ的なやつから書類などを全て押収物袋みたいな物に入れ、同じく僕のものも一つひとつ調べていました。
この風景を写真に収めたいなあ、などというノーテンキな思いが頭をよぎったけど、さすがにこの状況で
「写真撮っていい?」
と聞くのはノーテンキというよりは不躾でみっともない。
て、思ったくせにガサ入れの終わりかけにそれとなく引き出しからカメラを取り出してipodのそばに置いておいたら、やっぱり神様っているんだね、リーダー格が「これ、携帯?」とフってくれました。
「いや、実は安物のカメラ。ねえ、せっかくだから写真撮っていいかな」
「あはは・・・NO」
気の毒な子と思われたのか、なかなかの苦笑いで優しく断られました。
ちょっと気まずくなったので、じゃあ代わりにブログに載せるからという断りをつけて、何故だかその警官に僕を撮ってもらったけど、基本、自分の顔はブログに載せないのでまるで意味が無い。
アガっていたんだね。
感覚としては、空港で働いていたころ、一日入管局長で来訪していた舘ひろしを中央ブースで見た時と同じような気持ち。
あるいはある団体の組長さんとお話をさせてもらった時と同じような気持ち。
アガってたんだね。
そんなことがあったものだから、警官が帰った後もその一連で起こされた野次馬根性のコロンビアン達が僕を開放するわけが無く、新人のエスパニョーラたちを除く全員が集まってダイニングでその話をする羽目になりました。
サンドラに怒られた後も声のトーンを落としてしばらくは雑談が続いたわけですが、マリアが言うには
「アタシ、昨日事務所に電話がかかってきた時はアイツが、死んだのかと思ったけど・・・」
これを受けてセバスチャンは
「死んではないよ。逮捕されたんだよ。今、警察にいるんだよ」
警官が「決まり事で彼が何をしたか話せない」といった後「彼が戻ってきたら彼に聞いてくれ」と続いたから、おそらく死んではいないんだろうけど、捕まって警察署にいるのであれば何故住所を聞くために警察が不動産屋に電話をかけたんだろう。
彼が吐かなかったとか。それが無駄な抵抗だということはよほどの馬鹿でなければわかるか。
単に彼が住所を忘れていたとか。自分の携帯の番号を上二桁しか覚えていない僕が暗記しているくらい簡単な住所なんだよなあ。
夢は広がるばかりです。じゃなかった。謎は深まるばかりです。
その後、何故かみんなの中ではテロリスト説が有力になり
「明日から仲間のテロリストがこの家を見はっていたらどうしよう。だって絶対に何もないなんて言えないじゃん」
というマリアの気味の悪い一言でお開きになりました。
そうだな。俺も念のため極太とチャンピオンのお守りをきちんと付けて・・・あ、違う、あれをしているときはいつでも心おきなく死ねるということだから、あえて片方だけ外すか・・・でも万が一実際に死んだりでもしたら、その時に付けていた方を作った方は自分の運にケチをつけられたみたいで腹が立つだろうから、よし、喧嘩両成敗、喧嘩両成敗?ルームメイトが戻ってくるまで両方とも外しておこう。
と、こういう時だけ律儀な屁理屈をこね、受け入れ上手な日本人のフリ。
とかなんとか今夜の出来事が、昨夜あみちゃんに話た「俺の周りの犯罪者話」はすっかり過去のものだぜ、と振る舞った努力を水の泡にしてくれました。
これが知られたら僕がそういう人たちを呼びこむ体質だと誤解されること間違いなし。というより誤解じゃなくて正解だったらどうしよう。と思いながらも顔がニヤケてるんだから我ながら始末に負えない。
そりゃあ警官も苦笑いするわな。