2009年11月19日木曜日

冬の花火、夏の花火


クラスメイトの人妻コロンビアーナのRocioが写メを送ってくれたから思い出したんだけど、そう言えばこの前、みんなで花火を見に行きました。
ガイ・フォークスとかいう昔の人を祭るだとか、そんな意味合い(ちゃんと覚えてない。そもそも興味が無かった)のちゃちい花火大会がロンドン中の各所で行われてました。
その一つのカナダなんとかとか言う河川敷(ごめんやっぱ覚えてない)の公園にぼくらは行きました。

醍醐味の一つでもある花火の爆発音をかき消すように、なぜかクィーンをBGMに流し、かなりの至近距離にあがる風情もヘッタクレもない花火を眺めながら、ぼくは9年前にアキラさんと一緒に見た、その年の打ち上げ数日本最多の花火大会を思い出していました。

アキラさんは元ヤクザでした。
少年時代、地元の県警や鑑別所にお世話になっていました。

アキラさんは少年時代に自分でつけた、またはヤクザに監禁されたときにつけられた根性焼きが、両腕に多数あります。悪い方の部分での逸話をたくさん持っている人ですが、その根性焼きがうまい具合に左腕の縦一列に並んでる部分を縦笛に見立てて、その穴(根性焼き)をもう片方の指で押さえながら
「ピポピー、ピーポーピーピポピプピー・・・」
などと口で『東京砂漠』を奏でるという、内山田洋もガックシの疑似ギャグを初対面の人にやる、とてもお茶目な人です。

アキラさんとぼくは後にテレビ沙汰になる、とある会社の先輩と後輩という関係だったのですが、ぼくらはとっても仲良しでした。そしてぼくはアキラさんに憧れていました。

この花火の1年後、アキラさんは両目を失明します。
そして離婚もします。

その後もぼくらは時々会っていましたが、その時こんなやり取りがありました。
確かぼくがバーテンを辞めて次の仕事につくまでの間のことだったと思います。

「おまえ、社長(二人が勤めていた会社の社長で、彼の母でもある)から金も出させるからよ、暇なときは出来るだけ俺に会いに来てくれねえか。この近辺にはもう、おまえしか友達がいなくてよ」

「何寂しいこと言ってるんですか。いつもカラオケ代とか飲み屋代とかアキラさんに出してもらってるじゃないですか。それ以外に金を出すって言うんならぼくはもう会いに来ませんよ」

「でもおまえも今、仕事なくて、ちょっとでも金があった方がいいだろ?」

「それとこれとは別の話ですよ。ぼくは自分の好みで会いに来ているんです。ぼくは薄情な人間だから、同情とか義務感ではいちいちアキラさんに会いに来ませんよ。めんどくさい」

「ハハ、ひでえ野郎だな。・・・今、こんな目になったからアレだけどよ・・・目が正常な働きしてたら、俺、今泣いてるぜ」

「自信持ってくださいよアキラさん。ぼくはアキラさんに憧れてるんですよ」

「それは事故を起こす前の俺だろ?」

「違いますよ。いい女もそうだけど、いい男は歳をとるたびにいい男になっていくんですよ。つねに一秒ごとに右肩上がりに男前になっていって・・・昨日も男前の完全体だったはずなのに今日はさらにバージョンアップした完全体になってるっていうか・・・ほら、逆の例でわかりやすく言えば、昔痩せてて可愛かったけど今デブのピンサロ嬢とかいるじゃないですか。あいつら、何でか知らないけど絶対、痩せてて可愛かったころのプリクラとか持ち歩いて自慢するじゃないですか。だからどうしたっつうのに。何の足しにもならねえってのに。わかります?アキラさんはそれの逆です。」

「ハッハッ、相変わらずおまえの例えはひでえな」

「まあ、ようは自信を持ってくださいってことですよ」

どこまでが正しい記憶でどこからが勝手に塗り替えられた記憶か。
全部正しいのか、または逆か。

今となっては曖昧です。
この二年、アキラさんとは音信不通です。正確には音信不可能です。
連絡が取れなくなり、生きているかどうかもわかりません。

アキラさんを探さなくては。

医者に「癌の疑いが」ってハッタリかまされたあの時、明日に何一つ残さない生き方をしようと思ったのに、これだけが大きな宿題として残ってしまいました。
英語よりも、仕事よりも、女よりも、夢よりも。
教え子と同じくらい大切で大きな宿題です。

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